カンポンボーイの

果物歳時記南米編

2015年8月24日
ブラジル語名cupuaçu,　cupuaçu-verdadeiro
英名cupuassu
日本語クプアス　
学名Theobroma grandiflorum
アマゾン原産のカカオの仲間
　アマゾン東部の原産という事で、野生種はパラ州の南西のアマゾンの川に沿った狭い範囲やマラニオン州 の一部の川沿いの森で見られます。
コロンブスがアメリカに来る前から古くから各地で栽培されていたの作物なので、どこが起源地かはっきり 示すことができないそうです。 ブラジル北部の各地のほかコロンビア、ボリビア、ペルーで栽培されています。
毎月の平均気温が22度～27度で年間雨量2000mmから3000mmで、年間平均的に雨が降るような熱帯雨林の非浸水性 の場所に適応しています。
　クプアスを含む多くのカカオの仲間のうち9種はアマゾンが原産です。ブラジルにはクプアスに3種の栽培品種があります。所が今ブラジルではカカオの類の遺伝的多様性が危機にあるそうで、 それは木材の切り出しと広大なダムの建設によってカカオ類の豊かなアマゾンの森が消失していることによります。 これはカカオ類に限ったことではなくてアマゾンの森林消失が生物の多様性を危険にしていることの一例です。
クプアスの果実と種子
　クプアスの木の高さは自然のものは20mにもなる様ですが、農場で見た木は3mから4mというところでした。
葉は大きいです。葉の縁には鋸歯が無く丈夫そうで長さ15cmから50cm、幅は5cmから15cmでした。 葉の表側は艶のある緑色で 裏側は緑色が淡く白っぽく見えます。芽吹きの若い葉は赤っぽいそうですが育った葉は普通に緑色です。
大きな果実
　 果実は長い枝に短い果柄でぶら下がり、ラグビーボール型です。先はとがり気味のも両端が丸い感じのもあります。 長さは22-30cm、直径は12-13cmで重さは1.8-2.2kgでした。大きいものは4kgになるそうです。 熟すと自然に落ちます。
果皮は木質の殻です。硬く表面は緑色で鉄さび色の粉のように小さい毛がついていて、強くこすれると取れます。 殻を割ると厚さは2cmでした。中には軟らかい白い果肉に包まれた種子があります。 種は中心の筋のまわりに5つ並んで入っていますが、横に割らないと分りません。 種は30個くらい入っています。種の直径は2-3cmで厚さ1cmくらいの扁平で、あまり整ったった形はしていません。
果肉
　果肉は果実の40%くらいあります。 果肉は熟すと甘酸っぱい果物の良い香りがします。口あたりは水気もあり多少ねっとりしいくらか筋もあり甘くさわやかな 酸味が勝る味でした。
果肉でジュースやジャムを作り、醗酵酒も造ります。アイスクリーム、ヨーグルトに入れたりケーキを作ったりします。
バイア州のイツベラに行ったとき、お世話になったおばさんから作ってもらった白い果肉のジュースはいい香りがして甘く さわやかに酸っぱくて、農園めぐりで汗をかいた後だったので最高のジュースでした。 たくさんの果肉は冷凍して保存しておき使うということでした。
種子
　種は果実の20%ほどです。 種はカカオと同じ様に殻を割って、果肉とともにかき出して、積み上げておき果肉が醗酵して溶け出たところで 種を天日乾燥します。さらに熱で乾燥すれば、クプアス豆（クプアスビーンズ）というわけで、カカオ豆（カカオビーンズ） と同じに扱います。
クプアス豆は50%近くの脂肪を含むので、煎ってからごみや皮を除いてから細かく挽くとどろどろになります。 これはチョコレート作りでいうカカオリカーに相当します。これから絞った油はクプアスバターです。 油をとった後の固形部分はクプアス粉(クプアスパウダー）というわけで、それぞれカカオの産物のカカオバター、カカオパウダーに対応します。 クプアスの種から取れる油は融点が30度位なので普通の温度ではバター状の脂肪でカカオの脂肪と性質も成分もほとんど 同じですが、カカオバターより少し白い色をしています。
クプレート
　カカオの代わりにクプアスを原料として作ったチョコレートのそっくりさんを”クプレート（cupulate）”といいます。
白いクプレートもありますが、クプアスバターを使ってクプアス粉を入れないで作ります。

醗酵した後は天日で乾燥 火を焚いて熱くした鉄板上で乾燥 クプアスの殻


知的財産紛争
　ブラジルの農業研究機関(EMBRAPA）のアマゾン研究所の研究者は長年アマゾン特産のクプアスの利用を研究して チョコレート類似品を作り、1990年クプレート（cupulate）と名前をつけました。 ところが2000年に日本のアサヒフーズ（Asahi Foods)という会社がCupuaçuという名前の商標登録とcupulateの 製法特許を申請したので、ブラジルと日本で知的財産権を争う裁判となりました。 最終的に日本の会社の申請は認められなかったそうです。

クプアスジュース
　バイア州のイレウスの空港で見た軽食の店のメニュー看板のジュスーの中にクプアスがありました。 カカオもみえます。初めてみるジェニパポ、マンガバ、ウンブなんてのが有りましたが、 空港ではジュースは試しませんでした。

アマゾンにはいろいろ果物がりますが、クプアスは大きくて特徴のある形の果物ですから一度見たら忘れられないでしょう。

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