2017年5月15日
日本語名
アメリカホドイモ、アピオス
英語名Potate bean、groundnut、
Indian potato
学名Apios americana
中国香芋 菜用土圞兒
食用土圞兒 美洲土圞兒
数珠つなぎの芋
北アメリカ原産でカナダからアメリカの東部に自生する多年生の蔓になる豆の仲間です。さやに入った豆もできますが根にはでんぷん質の芋ができて食べられます。花はクズに似ていますがもっと混んで咲きます。地中にできる芋は塊茎と言って、茎が変形したものです。
大きい芋でも長さ5cm太さ3cm
芋は親指位の小さいものから大きくても握りこぶしくらいの球形から長球形で茶褐色をしています。大小の芋が間隔を置いて数珠繋ぎになっています。芋を傷つけると白い粘っこい乳液が滲みでてきます。
アピオスの花は下から咲く 蔓の下の方には色がある
つるは細いですが、良く茂り、そこらじゅうに巻き付き藪になるので厄介です。芋は横に伸びて数珠つなぎになりますから、あまり深く掘らなくても収穫できます。地上部は秋に枯れますが、地下の芋は生き残り冬を越します。芋を掘り残すと翌年芽が出て何にでも巻き付いて茂り、藪になるのでこれは面倒です。
花は外側が白く赤紫色できれいで、クズの花の様な良いにおいがします。芋は小さく表面は茶色ですが、中は白くでんぷん質でホクホクして甘味があり味は良く、茹でたピーナッツのような香りがいくらかします。
1本の蔓の収穫、全体の重さは100g、1本の根の長さは50から30cm位で、根の合計長さは2m60cm、芋は3x2cmほどのものが23個ありました。
アメリカは重要芋の原産地
アメリカ大陸は重要な芋の原産地があります。サツマイモがメキシコ辺り、ジャガイモはアンデスの山地、キャッサバはブラジル西部です。
北アメリカを原産とする芋はアピオスだけです。
ヨーロッパへの伝来はサツマイモとジャガイモは1570年とされています。アピオスは1597年にはすでに伝えられていたとされています。
北アメリカの先住民の食料
北アメリカの先住民はアピオスのデンプン質で、タンパク質含量も多く、甘みのあるうまい芋を採集して食料としていました。
アピオスはカナダからアメリカの東部の古代先住民の住居跡に多く野生が見られる事から、彼らにとっては大切な食料であって、住居の近くに植えていた証拠だと見られています。
多年生植物なので根を傷めなければ次の年も採集できます。１年中いつでも掘れば芋を手に入れることができる野生植物なので、インディアンは家の近くに植えてはいても作物として栽培したわけではなかったようです。
アメリカ大陸が発見されて後、やって来たヨーロッパ人は先住民がアピオスを色々な名で呼び、食料としていたことを記録しています。
例えばある部族のインディアンはホプニス（Hopniss）と呼んで夏にはよく食べ、冬の食料としては収穫して皮をむいて乾燥して保存したり、煮てから乾燥するとかカエデの甘い樹液で煮て乾燥保存したとか色々のやり方で保存食としていた事を17世紀から19世紀のヨーロッパ人は記録しています。
アメリカに移住した英国人には救荒食料
北アメリカに植民した人たちが迎える最初の数年間の冬の食料として大切なものであった様でグラウンドナッツ（ラッカセイとは違うから注意）、ポテトビーン、インディアンポテトなどと呼んで食べていました。
バージニア州に初めて英国人の永続的植民地を作った時の植民地の親分のジョンスミス（Jhon Smith）と言う人は「グラウンドナットは卵位の大きさでジャガイモと同じように良い、2インチよりも深くないところに40もつながっている」と1626年に書いています。
それから後になって1845年アイルランドでジャガイモに病気が出て大飢饉がおこった際にはジャガイモに代わる作物として急遽ピオスの導入が検討されました。しかし、耐病性のジャガイモを作り出すことができて、ジャガイモに代わる農作物とはなりませんでした。
1885年にはアピオスは園芸植物とみられています。
KBはジョンスミスが指揮していた英国人植民地バージニア州のジェームズタウン(Jamestown) に行きました。
そこは歴史公園になっていて植民者の砦や住居などが復元され当時の生活を再現していました。ポウハタン族インディアンの畑では棒で堀った穴にトウモロコシの種を播くと言う説明を子供たちは棒をもって聞いていました。このインディアンの畑でも植民者の畑でもアピオスには気がつきませんでした。
農作物化の研究
アピオスの農作物化についての試みは、アメリカやカナダの大学で、各地の野生種を集めての選抜育種、根粒菌による窒素の固定の効果、栽培法、栄養価値などの研究がされました。その中でアピオスには2倍体と3倍体があり、2倍体は豆を付けますが、3倍体は種を付けないことがわかりました。アイオワ大学などには今も色々な系統が保存されています。しかしアメリカでは農作物としては栽培されていない様です。味と栄養価は良いのですが蔓になる性質と収量が少ない事がネックとなっています。
日本では東北大学の星川清親教授がこの芋の可能性に着目して青森やアメリカから大量のアピオスを集めて研究を行い系統選抜で日本に適したもの選んで”アピオス”という名前をつけて普及につとめました。その結果、東北地方で農作物として栽培される様になったのです。
アピオスは世界的に見て農産物としては日本の生産が主なもので他には韓国、台湾、中国、アメリカで栽培されていますが僅かです。
2017年5月15日
