エッセンシャルオイル＝精油花から香り成分を取り出すには花を薬品に浸して取り出す抽出法と花を蒸して蒸発した成分をとる蒸留法があります。 イランイランの花を水蒸気蒸留して精油を採る場合、イランイランの花の香りが最も強くなる夜明けに摘み取った花を、すぐに蒸留釜に入れて蒸し、香気を含んだ蒸気を冷やして香気成分を含んだ精油を取り出します。 蒸留の時間経過によって性質の違う香り成分が出てくるので、精油も性質が異なります。 高級イランイラン香水用には蒸留開始から2時間までの最初に取れる精油を使います。この部分は花の重さに対して２％くらいの収量です。あとに続く時間経過で取れる精油は３階級にわけ、グレードにより用途を分けます。蒸留は22時間も連続して行うそうです。 蒸留の最初に取れる精油をイランイランオイルと言い、それからあとに取れるれる精油はカナンガオイル、マカッサルオイルとも言い、香りの質が落ちるとされいます。 色いろのグレードに分けられるイランイランの精油は化粧品、洗剤などのほかに食品や飲料の香り付けにも使われています。 イランイランの精油に含まれる主要な香気成分はアントラニル酸メチル、リナロール、ゲラニオール、酢酸ベンジル、安息香酸メチルです。 代表的な香水の処方ではイランイランオイルを1%から３％くらい入れています。 
イランイラン精油が有名になった話アジアでは昔からカナンガ（イランイランの別の国の呼び名）の花の香りの水とか油は昔から各地で使っていました。 ヨーロッパにこの精油が紹介されたのは1804年とのことですが、当時はイランイランオイルとは呼んでいなかった様です。辞書によるとylang ylangと言う言葉の使用例は1970年に初めてとあります。 イランイランの精油が香水として使われ天然の香料のブランド品としての名声を獲得してフィリピンの言葉ylang ylangが世界中で使われるようになったのです。その話は： 19世紀の中頃、当時フィリピンの商業の中心地はエスコルタ（Escolta)でした。フィリピン随一のファッションストリート として賑わっていたエスコルタ通りに薬局を開いていたドイツ人薬剤師シュテック( F.Shtek)さんがイランイランの木から取った高品質の精油、YlangYlang oilを売り出して地元フィリピンの上流社会で人気をえました。これが1864年にヨーロッパにもたらされ好評を博し、それからアメリカに伝わって賞用され、フィリピンのイランイラン精油は高級品として大量に生産され、木の名前と精油のイランイランは世界中に広まりました。 第一次世界大戦前はフィリピンが精油の生産の中心地だったのですが、フランスはコモロ諸島にフィリピンのイランイランの木を移植栽培して高品質の精油を生産する様になり、生産量は、コモロ諸島、マダガスカル、セイシェルなどで多くなり、さらに化学合成香料が出現したため、1920年頃からはフィリピンの生産は少なくなりました。 イランイラン シャネルNo.5 マリリンモンロー  イランイラン 世界で最も有名な香水の1つであるシャネルNo.5をはじめ多くの香水には天然香料、イランイランオイルが使われています。 シャネルNo.5 フランスの服飾デザイナーシャネル（Coco Chanel)が、新作ファッションを発表するにあたり、調香師 エルネスト・ボー（Ernest Beaux)に「女性の香りのする、女性のための香り」を作ってと依頼したのです。いくつかの試作品から5番の瓶を選びました。香水の名前は5月5日にファッションを発表するからNo.5としたとのことです。 1921年のクリスマスにファッションのお得意さんにプレゼントしたところ好評だったので、シャネルは東洋を思わせるエキゾチックな香りのこの香水を1922年から発売しました。その後は色々な経過を経て、現在のシャネルNo.5に引き継がれています。 マリリンモンロー 1950年代にはマリリンモンローはインタビューで、何を身に着けて眠るのか尋ねられた際、「シャネルNo.5を5滴」と答えたことが話題になり大いに宣伝になりました。その後のインタビューで「本当のことだし、裸で寝るとは言いたくなかったから」と言っているそうです。 1954年、彼女が J.ディマジオと日本へ新婚旅行に来た際に、「シャネルの五番」を引き出そうとした記者の「ディマジオ夫人？あなたは、寝るとき、なにを付けているのですか？」との質問に、「私が付けるのは… ラジオだけよ。」と応えたとの話があります。 イランイランを調合した有名ブランドの香水は幾つもありますから、夫々に良い話があるかも知れません。 伝説 フィリピンにはイランイランの起源についての伝説がいくつかあります。 大筋は、子供のない夫婦が神様にお願いして、娘を男に触らせないという約束のもとに娘を授かりました。イラン(ilang)と名付けて育てると美しい乙女になり、多くの男が結婚を申し込んで来ました。ある時、親が目を離した隙に結婚を申し込んで来た男に手を握られました。そのとたんに乙女は消え、香りの高い花を付ける木になりました。色いろなバージョンがあります。 ひとつを紹介しますと。 タヤバス（場所の名前）にはイラン（Ilang）ほど美しい乙女はいませんでした。 求婚者が大勢やってきました。そのほとんどは裕福で、町の大きな家での快適な生活をイランに約束しました。 山腹の小屋に住む貧乏な焼き畑農家の息子エドは富を提供することはできませんでしたが、勤勉で誠実でした。 イランはエドを好きになりました。 両親はイランの選択に反対し、娘にエドに会うことを禁じました。 恋人たちはイランが小川へ水を汲みに行ったとき、森の端で会うことにして、約束の時間にエドはイランに会うために畑から来ました。 両親は、イランが裕福な求婚者に無関心なのを怒って、娘が貧しい焼き畑農夫に恋をしていて、秘かに会っているのではないかと疑い、イランが水瓶を持って出かけたとき、娘を密かに追跡したところ、案の定、エドが川辺で彼女を待っていました。それ以来、両親はイランを家の外に出しませんでした。 イランは恋人を思い続け、エドの妻になれないなら、むしろ死にたいと願い、食べることを拒んで、美しい体がやせ衰えてしまいました。彼女が死にかけて横たわっていたとき、イランは小川近くの森の端のエドと蜜かに会った所場に埋葬されることだけを望みました。  エドは毎日、彼女の墓を訪れ、花を置きました。 ある日、彼は墓から成長している苗木に気づきました。彼は愛情を込めて、水をやり、草取りをしました。苗木はイランのように背が高く優雅な木に成長し緑豊かな枝葉を伸ばしました。 その木陰を遊び場にした子供たちは、なぜ男が毎日、遊び場をきれいに整えにやって来たのかを親からおそわり、それはイランという名の美しい乙女の墓だと知りました。  ある朝、子供たちが木陰でスキップすると、これまでに嗅いだことのない良い匂いがしました。見上げると、枝の間に奇妙な葉のような花が見えました。 彼らは「イラン、イラン、イラン・・・」と歌って木の周りを飛び跳ねました。 それ以来、この木と花びらが緑色で葉のように長い香りのよい花をイラン-イランと呼ぶようになりました。 イランとエドの話は、場所の地名があること、木と花の記述が正確で細かなこと、木の生えている環境と焼き畑農業の生活まで伺える昔話なので、KBは気に入っています。 前の頁に戻る 
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